西へ向かう

生かされていると思う。 生きているというより、生かされていると。 蜘蛛の糸が首の後ろからのびていて、上から吊るされているように思う。糸の先にはいつも、祖父を感じる。この世界の繋がり、蜘蛛の糸を自ら絶った彼によって私はこの世界に生かされている…

肥大化する

短命だった梅雨が終わり、燻ぶるように続いた雨が上がり、夏の後ろ髪を残しながら中秋の名月が昇った。 残暑と呼ぶには夏色が些か濃いような気がするが、日が落ちてから吹く風はススキのさざめく音がするようで。 季節が、容赦なく進む。 ここ1ヶ月ほどの間…

辻褄

30代で自分と向き合わないと、40代で辻褄が合わなくなる。 ポットキャストのキャスターの言葉が、魚の小骨のように刺さっている。 思えば、ずっと辻褄が合っていなかった。 辻褄を合わせるために、あれもこれもしていた。 自分の中にある社会への不適合さを…

35歳を生きている。

寒い。なんでこんなに寒いのか。 こんなにもマフラーに顔を埋めウールのコートを着込まなければ外出できない冬将軍の独壇場が続く世界において、隙間から微かに吹き込んでくる春の息吹を感じている。 あぁ、こんな季節の変わり目を空気という不確かな存在で…

夜のまたたび

最近、テレビを観なくなり毎日ラジオを聴いている。 朝はNHKのR1、その他は「夜のまたたび」を。 「夜のまたたび」はTwitterから派生して兼業作家になった燃え殻さんと、AV監督の二村ヒトシさんの二人で雑談をする番組。 燃え殻さんが番組内で言っているよう…

10/15

この1ヶ月の間に、恩師が2人、立て続けに亡くなった。 1人はちょうど1ヶ月前。 第一線で長年活躍していたカメラマンで、上京する前後、私の知らない世界を見せてくれた人。 1人は昨日。 1年だけ通っていた全日制の高校の教師。私に学問を続けるよう導…

夏の進軍を待つ

曇天が続いて、肌にしっとりと梅雨の残党がへばり付いている。 もうじき、夏が隊を組み梅雨の前線を蹴散らしながら進軍を始めるだろう。 季節はいつも通り移り変わり、私たちの揺れ動く生活の上を過ぎていく。 ほんの数ヶ月の間に、世界が大きく変わってしま…

晩夏の入口

2020年。 30代前半と呼べるのもあと少しとなった。 先日読んだ本に載っていた、英文学者 福原麟太郎という方のエッセイにある「四十の歌」の一節。 四十の歌は秋の歌である、蕭条として心が澄んでくる、あきらめのすがすがしさを身にしみて覚える。(中略) 天…